ポール・パーカーとオーストラリアの大地で、教育について語る

Paul Parkerと

別役慎司 with ポール・パーカー

演劇学校AIDAは、アメリカに4つの拠点を持ち、ロサンジェルスを本拠地にたくさんのプロの俳優を育ててきた。その校長であったPaul Parker氏は、過去二度STONEψWINGSアクティングスクール主催で、ワークショップを行った。別役慎司が、Paul Parker氏の自宅があるメルボルン西部ランズバラを訪問。二泊三日の滞在後、帰り道で対談を行った。

Paul Parker Performance Coaching
ポール・パーカー・ワークショップ2014

演技講師になるきっかけ

別役:では、インタビューを始めよう。まず、聞きたいのは、ポールが「教える」ことについてどのように考えているのか。演技を教えることの喜びって何だろう?

 

ポール:その答えとして最適な、教えるきっかけとなった二つの短い話をしようかな。

それは初めて教えることになった英語のクラスでのことで、生徒は15、16歳の高校生だったと思う。その時、先生が「わぁ、すごい。君は自然体だ。すごくいいね」といってくれた。そして、演劇学校で最初のクラスを持ったときも、そこの先生が「世の中には教える才能を生まれながらにして持っている人がいる。君はその一人だ」といってくれたんだ。

もう一つの話は、演劇学校を卒業して数年目、メルボルンでプロの俳優として働いていた時のことで、その時はある学校で演技を教えていたんだ。その時、ぼくの父さんと母さんが、ぼくが脚本と演出を手掛けた芝居を観に来てくれたんだ。そして母さんがいったんだ、「あなたが生徒に話をする姿を見ていたわよ。みんなあなたの話に夢中だったわ。あなたはとてもいい俳優だと思うけど、それ以上に教えることの方が向いていると思うわよ」と。ぼくはすぐに、「いや、いや。教えることは好きだけど、演技をしたいんだよ」っていった。そういう特別なことがあったんだ。それが1991年か1992年。仕事が好きだったし、もし教える才能を授けられているなら、その才能を使うことを幸運だと思う。プロの俳優になる道はとても厳しい鍛錬がいるけれど、教える道は無意識的に向上していくところがあるといえるし、そういう意味では、幸運にも教師になる才能を与えられたといえるね。

ぼくが十代のころにとても素晴らしい先生がいたんだ。一人はプロの役者だった、リッチ・エヴァンズ。もう一人はプロの役者であり、コーチでもあったグレン・ベン。1970年代だよ、シンジさん、彼らはぼくを演劇の歴史に導いてくれたんだ。たくさんの劇作家に触れた。シェイクスピアだけじゃなく、モリエールとか、たくさんの。70年代から80年代にかけて、大きな基礎が築かれたわけだね。有名な劇作家や戯曲を知ることから始まって。

それで、質問の答えだけど、好きだっていうことと、最も大きなやり甲斐は、生徒の向上や成長を見ることができるということ。そして何よりも嬉しいことは、生徒がいい仕事をして、そして、報酬を貰える仕事をもらうことだね。演技が良くなるのはもちろん素晴らしいし、彼らが仕事をもらえたら更に最高だよ。

来年2015年、先生としてのキャリアは26年目になるんだ。

 

別役:今でも演技をしたいと思う?

 

ポール:いいや、思わないよ。2003年にロサンジェルスでテレビドラマの役を断って以来やってない。11年前だね。それ以来演技をしたいという思いはないよ。いや、100%とはいえないよ。たまにね、たまにそう、戯曲を読んだときになにか面白い役を見つけて、「これやってみたいな。そうしたらいいものになる」なんて思うけど。まぁ、でもそんなもの。実際にやろうとはしない。

田舎暮らしのメリット

別役:それでは次の質問にいこうかねぇ。ポールは今田舎に住んでいるよね。ぼくも何日間かそこで過ごさせてもらった……壮大な景色で。(ポール笑う)

ポール:広くて。(笑う)

別役:(笑う)

ポール:Arigato。

別役:ポールにとって、そのメリットってなに?

ポール:良い質問だね。ぼくはメルボルンで育ったんだ。二十代のときに森林地に土地を買って……もうそこは所有してないけど、十代の頃から、いつも田舎町に住んでみたかったんだ。1991年にシドニーに移り住んだけど、1年半かな……シドニーはメルボルンより大きな都市で……その後はロサンジェルスに引っ越して。ロスもまた巨大な都市だし。数年後には、ニューヨークに移って、ニューヨーク校を開校して、そっちに移り住んだんだ。ニューヨークの設立後には、またロサンジェルスに戻って。これらの都市ってものすごい人口だよ。ロスの中心地とマンハッタンを合わせて2000万という人口を抱えている。

学校で教えることが終わりを迎えようという頃、ぼくはよく空想していたんだ。農場を持って……(ここでコアラの標識を見つける)あの標識見える? 木を見てたら、コアラを見つけるかも。

別役:いいね。(笑う)※先ほどまでカンガルーを見つけようとしていたが、コアラを探し始める。

ポール:ニワトリやアヒル、ガチョウやハトを田舎で飼うというもの。ぼくが十代のころ、兄とぼくはハトを飼っていたんだけどね。そして、また大人になってからハトが飼えるということは、とても楽しいよ。ぼくは、幸運だよ。というのも、静かだし、広いスペースがある。身体を休めることや、動物の世話や、家族のことにも集中できる。

教えるということになったら、もちろん運転をしないといけないわけだけど。近い場所で教えることもあれば、スカイプで教えることもある。毎週スカイプで教えているけど、それなら離れている気もしないしね。遠いところでいえば、メルボルン、ロサンジェルス、ニューヨーク、東京に教えに行くことがあるけど、そういうときも、とても新鮮な空気で取り組むことができるんだ。田舎にいればとてもリラックスできて、他の場所でいざ仕事というときは、スイッチを切り替えて必要な仕事を行うことができるんだ。

人は住んでいるところで幸せだと感じることができるなら、なにをするにも、身体も心も精神も良い状態でいられるだろうね。

 

ポールの自宅と庭
自宅で記念撮影

五感と不便さ

別役:外から刺激を受ける五感って、人間にとってとても大事だね。

 

ポール:うん、五感というのはとても大事。心理学者がいうには、人間の心は視覚によるものが大きくて、それから聴覚や触覚……つまり感覚だよね。演出家にとって――ぼくも君も演出家だけど――視覚が圧倒的に重要だ。どのように見るか。つまり、人を見て、俳優を見て、状況を見て、良い読み手でないといけない。それに、オーストラリアの風景を見るのも好きだし、劇場の風景を見るのも好きだね。愛しているからね。

 

別役:最近では多くの若い人がスマホを持って、ずっと画面を見ているよね。それは良くない。ぼくが思うに、若い人は自然が必要だ。自然は人を育てるから。

 

ポール:確かに、世界への感謝の念を育ててくれる。

 

別役:教えるのに不便を感じることは?

 

ポール:不便を感じたことは一度もないよ。一度もね。だって好きだもん。(笑う)ないねぇ。まぁヘリコプターがあって、メルボルンとかシドニーまで行けるなら、そりゃいいけどね。

過去二年間、ワークショップのために東京に行って、それはすごく楽しかった。日本人の人たちが成長して良くなっていく、それから、仕事を取れるようになる。そのことに関われた。教えるというエネルギーとワクワク感に満たされて、彼らと経験を共有し、成長できた。

羊と戯れる

次回の日本でのワークショップは

別役:そうだよね。東京にまた来てワークショップをしてもらう計画を立てているけれど……。何か日本の俳優たちにメッセージはある?

 

ポール:もちろんのことだけど、もう一度日本に戻ってこられるということはとてもワクワクするよ。もう、一緒にどんなカリキュラムにしようかということを話したよね。(※一つの作品を題材に演出や指導をしていくというもの)わぉ、あの作品にしようか、この作品にしようかとか考えてる。いつだってぼくは役者に演出することを楽しみにしているんだけど、STONEψWINGSの役者は才能があるだけでなく、情熱があるから、成長すると思うし、新しいなにかを掴んでくれると思う。ぼくたちはいつも向上させることに取り組んでいる。2013年と2014年、一緒に学んでくれた人たちが、どのように成長しているのかを見るのも楽しみ。例えば、「恋の骨折り損」のビデオを観たけど、(※ワークショップメンバーも多数出演したSKY SOART ψ WINGSの舞台をポール宅で観た)彼らの中の自信や成長をしっかり見て取ることができたよ。みんな本当によくやったね。いい舞台だった。ワークショップでの演出を楽しみにしているよ。

 

別役:ここまでありがとう。インタビュー終了。バイバーイ。

オーストラリアの大平原
メルボルンの街並み

対談を終えて 別役慎司より

ニワトリをだっこ

オーストラリア旅行の際に、すかそあメンバーに頼まれて、ポールと対談をしようとしましたが、プライベートで休み中ということで、なかなかOKをもらえませんでした。最終的には、音声だけを録るということで実現しました。メルボルン タラマリン空港に向かう車の中で行いました。右のyoutubeをご覧頂ければ、フロントガラス越しにオーストラリアの風景を見ることが出来ますよ。走っている道は、野生のカンガルーやコアラが生息する場所なんです。
個人的には、都会的なメルボルンと、田舎で風光明媚なポール宅の両方を堪能できた、素敵な旅でした。

動画

こちらからはyoutubeで完全版をご覧になれます。